ノウハウ
見落とし厳禁!新築アパート投資の「間取り」に潜むリスクとは
2022.09.13
前回、土地先行の新築アパートを購入する際、気を付けるべき事に関して全体像をご紹介させて頂きました。
前回のコラムはこちら➡「宅建業者も答えられない?新築アパートを購入時の大事な心構えとは」
今回からその具体的内容をご紹介させて頂こうと思っております。
そこで前回のおさらいですが、土地先行の新築アパート投資を検討するに当たって、購入側が注意すべき事の全ては「間違い探し」をする。
という点をお話しました。
更に細分化すると、
・宅建業者が知らない事で起こる間違い。
・絶対に知ることが出来ない事で起こる間違い。
この2点のリスクヘッジをどう行うか?が肝になるところまでお話しました。
そこで今回はその両方のリスクを持っている重要課題の一つ「間取」に関してお話させて頂きます。
土地先行の新築アパート投資を検討する際、興味ある物件を見つけ、その業者に資料請求をすると必ず間取図が添付されてくるのはご認識の通りかと思います。
その想定間取から部屋数を割り出し、建築費や家賃収入が決まる大切な資料の一つです。
ここに大きなリスクが隠れています。それは何かお分かりでしょうか?
私は仲の良い投資家さんにこの質問をすると、必ず返って来る事は本当に成り立つ間取なのか?でしょ。という回答が返って来ます。
これは確かに正解です。
では、成り立つとはどういった事??と返すと、
条例に準じた形で間取検討されているか??とか建築基準法通りに設計されているか?という回答が返って来ます。
これも確かに正解です。
ですが、もっと単純な事で大きな間違いが起こるのです。
確かに間取図を貰って、条例や斜線制限など見落としが無いか?調べる事は大切な作業ですので、いくら購入側が素人であっても、ご自身で調べる必要はあります。
但し、ほとんどの業者もそこは注意しており、しかもその間取図のほとんどはきちんと資格を持った設計士によって検討されているので、それほど心配する要素ではございません。
ここで最も注意しなければならない事は、
“どの土地の資料(測量図)を参考(正として)に”間取の検討がされているのか??
です。
ここに大きな問題が潜んでいます。
それは業者と発注先の設計会社とのやり取りにおいて間違いが起こります。
しかもその間違いはこれからお話しますが、業者側、設計側ともに言い分は正であり、そこで起こる間取変更はその間取でアパートを建てようと思って購入してしまったお客様に全て帰属する形になります。
私は知らないでは済まされません。
業者と設計会社間では、先ず業者が土地を見つけて来ます。
その土地に対して、土地に関する詳細資料(謄本、公図、測量図等)を添付して、設計会社に間取検討依頼を行います。
ここで業者は間取検討を行ってもらう際の測量図を必ず添付するのですが、この測量図が「いつ」作成された資料なのか?がとても重要になるのです。
マイホーム等をお持ちの方だと想像付きやすいかと思いますが、ご自身の実家でも構いません。
ご自身保有物件及びご親戚、ご友人も含めて、ご自身が購入された土地を売却するまでに測量などされたご経験は御座いますでしょうか?
おそらくほぼ全ての方が「なし」と回答される事が容易に想像されます。
そう我々業者が仕入れて来る土地も、そのほとんど現所有者様が購入された際に測量された土地で、ほとんどが数十年も前の測量図しか持っていない事がほとんどです。
そこで業者が設計会社に依頼する間違った依頼の仕方を行うのが・・・
(とりあえず)その測量図を正として、間取検討してくれ。です。
この一言が数千万クラスまで被害の可能性を広げます。
依頼された設計会社がここで、いやこんな古い測量図だと建築確認申請する際、現況測量したら全然形や寸法が違うとなって間取がやり直しになりますとか言ってくれたら良いのですが、依頼された設計会社もそんな事知っているだろう。とか、その後の事は自分たちの責任では無いと言った考えで依頼された測量図を正として間取検討を行い、業者に設計図を提出する形になります。
業者の中ではその間取図が本当に正しいか?役所に確認に行くでしょう。
役所はある程度条例や建築基準法に反していないか?一緒に考えてくれます。
ですが、それはプロの設計事務所が条例など調べて書いている間取なので、OKじゃないですか?と言ってくれます。
斜線制限もその測量図を元に道路斜線、北側斜線等、諸々クリアしていると判定を受け、業者は自信をもってお客様に提案し、お客様が気に入り、購入。
そして、その設計図書を施工会社に提出し、建築確認申請を進めて行くうちにその設計会社からこの間取が入らないと一報が来ます。
皆が「えっ?」となり、その理由を聞くと・・・
土地の現況測量及び確定測量をしたら、頂いた土地の図面とズレており、真北測定を行ったら、
斜線に当たり、3Fの一部屋が建ちません・・・ ※これ実話です・・・
お客様は騙された!と憤慨し、業者にクレーム。
業者は設計会社に騙された!と言い、設計会社にクレーム。
設計会社はあなたたちが提出された測量図を元に間取を入れたまでです。
その間取が間違っているなら責任負いますが、
土地の形状が変われば間取が変わるなんて当たり前でしょう!と言い返され、返された業者は土地の売買契約上、この測量図を元に売買契約を行うことをお客様が認めており、現況測量や確定測量を新たに行うことなどは言っていないと言って、全ての責任はお客様にありという法的処理が取れる形になります。
実際裁判を行っても、買主側が負けるでしょう。
この問題は例え現況測量及び確定測量を契約条項に入れたとしても間違いが起こる可能性があります。
全てがどの測量図を元(正として)に間取検討を行っているか?に付きます。
土地の売買契約上に確定測量図をする事を引き渡し条件にしても、確定測量をする事が趣旨であり、それを元に間取を再検討などしない場合がほとんどだからです。
それほど重要な事であるという事を業者が知らないために悪意がありません。
さらには、現況測量図及び確定測量図を元に行ったとしても、測量には他に真北測定(方角を測定)や高低測量(道路と土地の高低差を測定)などもあり、そこに引っ掛かる可能性もあります。
だからと言って、今後購入検討する際、全て正しい測量図を業者側に求めるという手法がありますが、おそらくそんな事を言っていては本当に欲しい物件は他の人が購入してしまうでしょう。
土地の状況はいろいろで、確定測量が出来ない理由で、好立地が安く購入できることも多々あるからです。
他には契約時に間取の修正において収益を損った場合、業者側の責任にする条項を結ぶ手法は良く取られます。
これは一定の効果はありますが、私的にはナンセンスだと思ってます。
何故なら簡単に支払いに応じてくれる信用ある業者ならまだ良いですが、ほとんど簡単に支払いに応じてくれる業者などいません。
簡単に支払いに応じるかどうかはなってみないと分かりません。
人は立場や状況が変われば違った事を言うのは世間の常識です。
おそらく裁判になるでしょう。投資リテラシーとして、その機会損失などを考えると、とても効率的な投資手法とは思いません。
なので間違いでは無いですが、とてもナンセンスな手法です。
最もプロの不動産投資家として評価される対策としては、知識を身に付けるという事は大事ですが、それよりもご自身のメンターとなる設計士を見つける事です。
とても簡単な事で、業者から出て来る図面などをきちんと精査してくれて、リスクを教えてくれる設計士をあなた自身の身近に置くという事で解決出来ます。
セカンドオピニオンです。
そしたら、完璧な測量図が無くても、この案件は真北が多少ズレようが影響無いので大丈夫です。とか、
今の図面から多少でもズレると彩光取れなくなるので、確定測量は必須にした方が良いと言われたら、業者に確定測量を貰って、そこでOKで無ければ買わないと伝えるような対策が取れます。
私はずっとその手法が正しいと思って、メンターの設計士さんに私が購入する物件を見て貰ってますが、なんと過去2件ほどその設計士さんのおかげで難を回避した経験があります。
もし業者の出す資料を鵜呑みにして購入していたら、破産してました・・・
以上が間取図における業者が知らないリスクです。
業者というのは、自分が購入するわけでは無いので、設計士という有資格者が作成した間取は正しいと簡単に信じ込みます。
それが大きな間違いを引き起こします。
もちろん大手やハウスメーカーなどから直接購入される場合はこのようなリスクは回避出来ます。
安く買えるか?は微妙なところですが・・・
少なくとも、今後土地先行の新築アパート投資を検討する際は、業者から貰う測量図を意識して下さい。
そして昭和に作製など明らかに古い場合は、必ず現況測量を取る事をおススメします。
そして、その現況測量を元に(正として)間取検討する事です。
間取編はとても内容が濃く、言いたい事は他にも山ほどあるのですが、
次回はこれよりももっとリスクの高い「絶対に知ることの出来ないことで起こる間違い」に関して、実際に起こった経験則を元にご紹介させて頂きます。
過去60~70棟ほどやって来ましたが、私の案件で唯一1棟起こってしまった大事故です。
そしてそれをどう対応したのか?施主様との奮闘記をご紹介させて頂こうと思っております。
今回、かなり長くなりましたが、最後までお読み頂き誠にありがとうございました。